認める(したためる)
「認める(したためる)」という言葉をご存知でしょうか?
通常、この漢字は「みとめる」と読みますよね。認める(みとめる)、つまり目で見て判断することという意味で使われている方が多いと思います。
しかし「一筆認める」と書かれてあったらどうでしょう?「いっぴつしたためる」と読みます。
さて、いったいどういう意味なのでしょうか。
今回は、意外に奥が深い「認める(したためる)」について解説します。

認める(したためる)の意味とは
「認める(したためる)」とは、「文章を書く」という意味です。
先ほど例に出した「一筆認める」とは、書き記すという意味になり、「思うところがあり、一筆認めました」などと使い、手紙などで使われる表現です。
しかしこの「認める(したためる)」には、他にもいろいろな意味があり、古くは平安時代からすでに使われていました。古語では「したたむ(認む)」といいます。この言葉はそもそも「万全に事をなす」という意味でした。
『源氏物語』須磨の章に、「よろづの事ども、したためさせ給(たま)ふ」という一節がでてきます。
現代語に訳すと「万事を処理なさる」という文章です。このことから、平安時代には「処理する、整理する」という意味で使われていたことが分かります。
また、鎌倉時代に成立した『平家物語』では、「準備する、仕掛ける」という意味で使われている場合があります。
「河なかの橋を踏まば落つるやうにしたためて」という一節です。これは、川にかかっている橋を踏んだら落ちるように仕掛けておいたという意味になります。
もうひとつ、「したたむ」には「食事をする」という意味もあります。こちらは時代がぐっと下って大正時代の小説家・梶井基次郎の作品にその用例を見ることができます。
「夕餉をしたために階下に降りる頃は(冬の日・1927年)」、しかし最近では食事をとることを、食事を認める(したためる)とは使いませんね。ちなみに夕餉とは「ゆうげ」と読み、晩ご飯のことです。
本来はいろいろな文脈で使われていたこの「認める(したためる)」という言葉ですが、時代の移り変わりとともに姿を消していきました。
現代ではほとんどの場合「文章を書く」という意味でしか使われていませんし、限られたシチュエーションでしか見かけない表現となりました。
認めるの使い方・例文
1.遺言を遺すにあたり、ここに一筆認めておく。
2.一緒にランチでも認めないか。